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院長ブログ

コレステロール値改善薬アトルバスタチンの局所投与で、糖尿病患者の歯周病が改善する


 スタチンは、コレステロール値改善薬としてよく使用されている。アトルバスタチンはスタチンの一種だが、その局所投与が歯周病の改善に効果があることが最近のアメリカ歯周病学会誌に掲載されている(1)。局所投与の実際は、74人の糖尿病2型患者の歯周ポケットの中に、アトルバスタチンを1.2%の濃度でゲル状に調整し、シリンジで注入するというものだ。処置後6カ月と9カ月における観察では、歯周ポケットの深さ、アタッチメントレベル、骨欠損の深さをパラメーターとした場合、アトルバスタチン使用群は対照群と比較して、統計学的に有意に上記の歯周病のパラメーターが改善している。

 この論文のポイントは、一つはなぜコレステロール値改善薬が歯周病に効くのか?という点だ。その作用機序の一つに、スタチンには抗炎症作用があることが挙げられている。また、スタチンはBMP(Bone Morphogenic Protein)の作用を増強し、骨芽細胞からのosteoprotegerinの分泌を促進することも知られているが、そういった作用も関係しているのだろう。

 また、二番目のポイントは、なぜ本剤が糖尿病患者の歯周組織の破壊の回復に貢献するのか?という点だ。一般に、糖尿病患者は終末糖化産物(AGE=advanced glycation endo-products)のレベルが高まっていることが知られているが、このAGEは歯肉の循環障害を起こし、健全な歯周組織の構築を破壊し、バリヤー機能を低下させることがわかっている。スタチンは、この糖尿病患者で多く蓄積されているAGEを減少させることが、糖尿病患者の歯周病改善に効果を発揮する理由であろうと推測されている。

 通常、歯周病に対する薬剤の局所投与は抗菌薬を用いるのが一般的だが、本論文のそれはコレステロール改善薬である点が面白い。そして、糖尿病患者だからこそ有効という点も、また面白い。さらに、歯周ポケット内にペースト状の薬剤をさすだけで、歯周組織の破壊が回復する点も極めて興味深い。抗菌薬では炎症の進行を止めることは可能だが、組織の再生までは期待できないと思われているからだ。また、歯周病は糖尿病の第6の合併症といわれているが、こういった簡便な方法で糖尿病患者の歯周病が改善出来たら、糖尿病患者の歯周治療の幅が広がってよいことだ。

 シリンジによるポケット内への薬剤投与で歯周病が改善するなら、それは大変に結構なことだろう。  

参考文献:

(1)J Periodontol. 2016 Nov;87(11):1278-1285.

Efficacy of Subgingivally Delivered 1.2% Atorvastatin in the Treatment of Chronic Periodontitis in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus: A Randomized Controlled Clinical Trial.

Kumari M, Martande SS, Pradeep AR, Naik SB.

 

中山 康弘 院長

■この記事の監修者

中山 康弘 院長

略歴・資格
  • 1974年 香川県立高松高等学校卒業
  • 1981年 福岡県立九州歯科大学卒業
  • 1981年 岡山大学歯学部口腔外科学講座入局
  • 1990年 岡山大学大学院歯学研究科歯学専攻修了 - 歯学博士(岡山大学)
  • 1991年 香川医科大学医学部非常勤講師
  • 1992年 岡山大学歯学部非常勤講師
  • 1992年 岡山赤十字病院歯科口腔外科副部長
  • 1996年 高松赤十字病院歯科口腔外科部長 - 日本口腔外科学会指導医
  • 2004年 高松市にて中山歯科クリニック開業
  • 2007年 日本臨床歯周病学会認定医
  • 2011年 日本歯周病学会歯周病専門医
  • 2016年 日本臨床歯周病学会歯周インプラント認定医
  • 2022年 加圧サイクル・インストラクター資格
修了研修・学会等
  • 日本口腔外科学会
  • 日本口腔科学会
  • 日本歯周病学会
  • 日本臨床歯周病学会
  • 日本口腔インプラント学会
  • AAP(American Academy of Periodontology)アメリカ歯周病学会
  • 日本加圧トレーニング学会
  • 日本抗加齢医学会

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